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手術やヒアルロン酸注入時における 抗血栓薬の休薬~再開について
2016.09.08
お知らせ
ちょっとかたい内容が続いてすみません。
昨日ヒアルロン酸注入治療についての内容をアップしましたところ、
いわゆる血液がサラサラになる薬(抗血栓薬)を服用している方が形成外科手術やヒアルロン酸注入治療を希望される場合についてのご質問がありましたので、こちらについても少し。。。
食べに行ったわけではありません。願望が漏れ出てしまいました。
日本循環器学会を中心とする合同研究班により、2008年に非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン、2009年に循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン が作成されました。
また日本消化器内視鏡学会より、2012年に坑血栓薬服用に対する消化器内視鏡診療ガイドラインが出されています。
坑血栓薬を内服中の周術期管理については、これらのガイドラインをもとに、新薬の相次ぐ登場やヘパリン置換に対する評価の変遷などを考慮して、各病院が独自のプロトコールを作成し対応している状況にあります。
(昔と違って、起こった時の重篤さを考えて出血性偶発症よりも血栓塞栓発症リスクの方が重要視されてきており、低侵襲手術や手技では極力休薬しないまたは短くする方向性となっています)
さすがにバイアスピリンやワーファリンなどは、血液がサラサラになる薬、として一般の方にも広く認知されるようになったため、患者さんが自己申告してくれる事が多いです。
しかし相次ぐ新薬の登場、および坑血栓薬の2剤~3剤併用療法の普及などにより、ご本人が坑血栓薬と認識されておらずに申し出ていただけない事があります(特に2剤併用の片方がバイアスピリンだと、もう1剤の方を坑血栓薬と思っておられない場合がよくあります)
何らかの内服治療を受けておられる方に手術や注入療法を行う場合には、確実にお薬手帳などで薬剤全てを確認する必要があります。
クリニックで行う局所麻酔下での形成外科手術は、ほぼ体表面における手術であり、出血コントロールが比較的容易ですし、もし術後の出血があったとしてもその対処も可能です。
一方でヒアルロン酸注入に関しては、
盲目的手技となる(目をつぶってデタラメに刺す、という意味ではありません切って開いて直視下に血管を見ているわけではない、という意味です)こと、
および
ヒアルロン酸そのものが注入した後に水を吸ってやや膨らむので、血管を刺して出血し血腫ができると、それらが合わさって予期せぬボリューム↑となり、そのため注入直後は何事もなくても数時間~3日後の間に近くの細い血管を圧迫して血流障害を起こしてしまう可能性があること
を考慮すると、
坑血栓薬を内服中の方にはそもそもヒアルロン酸注入は行わないか、行う場合は適切な休薬期間を設ける必要があると思われます。
(ただし動脈塞栓と違い、圧迫による虚血の場合は、早期にヒアルロニダーゼなどの薬剤投与やその他の処置で対応することで、ほぼ回復が可能です。しかし極力避けなければならないのは当然です。)
術前の休薬期間については、
・そもそも何の病気で
・どの製剤を内服していて
・どんな手術/処置を受けるのか
によって異なります。
術後の再開時期に関しては(入院してヘパリン置換を受けている場合や硬膜外麻酔を留置している場合はまた別ですが)、術後の出血が無いことを確認したら、直後に再開または24~48時間後の再開が推奨されることが多いと思います。
私個人としては、術後出血無いことを確認したうえで原則翌日までには再開とすべき、と考えています。
先日の日本医療機関機構の発表でも、術後の抗凝固薬・坑血小板薬投与再開忘れによる脳梗塞発症などの事例報告および注意換気がなされています。
アスピリン中止後の1週間前後で血栓症を発症しやすいことを考えても、術後数日たって、ましては1週間後の再開では遅すぎます。
手術の場合のみでなく、大きな骨折や外傷の際にも抗血栓薬が中止され、その後の再開が遅かったり、または医師が再開の指示を忘れていたり、患者さん自身が指示されていたのに服薬再開していなかったり、、、
のために脳梗塞を起こした事例もあります。
手術の直後、または原則翌日再開❗としておく事で、再開忘れによる事故を防ぐことができる、
2日後再開では医師も患者さんも忘れる原因となりやすいのでは、と思います。
もちろんあくまで目安であり、もともとの疾患の病態や治療手技により方針は異なりますので、主治医とよくご相談ください。
★坑血栓薬とは
一般的にいうところの「坑血小板薬」と「坑凝固薬」の総称として用いられます。
★坑血小板薬
血液中の血小板を非活性状態に保ち、血小板相互の凝集をおこさせないために用います。
高血圧や糖尿病からくる動脈硬化やステント後の管腔の狭窄や閉塞などを予防します。
有名なバイアスピリンの他に、プラビックス、プレタール、パナルジン、エフィエント、エパデール、アンプラーク、ドルナー、プロサイリン、コンプラビンなどがあげられます。
血管拡張薬であるオパルモンやプロレナール、冠拡張薬であるペルサンチン、その他ケタスやセロクラールなども坑血小板作用があります。
(後発薬はさらにたくさん存在します)
坑血小板療法を受けている方は、もともとの疾患もその程度も様々であり、術前の休薬期間もその状態や薬剤の種類により異なります。
★坑凝固薬
血小板による一次止血の後でおこる、フィブリン網による強固な血栓(フィブリンが大部分を占める構造の中に血球が巻き込まれている、大きなかさぶた)産生を抑制するために用います。
静脈血栓、心房内血栓などが動脈から脳や他の重要臓器へ移動して、比較的太い血管を閉塞し(塞栓症)、広い範囲の脳梗塞などを起こすことを予防します。
古くからあるワーファリンの他に、
プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナといった、
NOAC(non vitaminK antagonist oral anticoagulants)またはDOAC(direct oral anticoagulant)
と呼ばれる、作用時間の短い新薬がここ数年で普及しました。
坑凝固療法を受けている方はそもそも休薬での血栓リスクが高く、通常は総合病院での手術になります。
浄水皮ふ科クリニックHP h
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