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ホテルの特別室に連泊ののち、現在中部国際空港で宿泊中の学会出張

2017.09.30

学会・研究会・セミナー

こんばんは、井上です。

昨日、今日と、札幌で開催された美容外科学会総会に参加してきました。

杉野宏子先生と西田美穂先生

 

で、なぜか今は中部国際空港そばのホテルにいます(→後述)。

 


今回の学会は手術、非侵襲治療のどちらのテーマも充実しており、名高い先生方の手術のビデオ供覧も多く大変勉強になりました。

手術のご講演内容についてはたくさんブログが書かれていると思いますので、私は

 

岩手医科大学 形成外科 柏谷 元 先生 

 

のご講演について・・・

 

 

 
『顔面解剖の理論:合併症予防のヒント?』
 

頬は目鼻耳などの感覚器、口のような消化器、といった役割を持っていませんが、だからといって頬はただの余白部位なのでしょうか?

 

霊長類は頬の脂肪は少なく、大事な顔を保護するために知覚が鋭敏です。

 

しかしヒトは、髪・眉毛・睫毛・ヒゲ以外の毛を退化させ、牙を剥き出しにする闘争行動は行わず、手指が発達し口唇を使って作業することがなくなり、大きな集団で生活するために高度なコミュニケーションをとる必要が生じたことで、顔面保護のために備わっていた各機能を、表情のために作用転嫁させてきました。

 

という進化の歴史を読み解くことから始まった、今回の柏谷先生のご講演。

 

 

柏谷先生の顔面解剖理論の基本は、表情筋の立体構築を深部から積み上げて考えるのですが、

 

・最も深い層である第4層(口裂口峡を形成する筋群:口輪筋、オトガイ筋、頬筋、口角挙筋など)、

・その上に取り巻くように配列する第3層(口唇開大筋群:lip retractorsである上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋、大小頬骨筋、下唇下制筋など)、

・さらにその表層の第2層(頭蓋頚部の浅筋膜:広頚筋、眼輪筋などの頭蓋表筋系)、

・さらに眼、口裂周囲の皮筋である第1層(最浅層筋:皺眉筋、笑筋など)

 

これら4層の表情筋の間を埋めるのが脂肪組織であり、シート状に広がる第2層(≒mid face SMAS)を境に、浅脂肪(皮膚とSMASの間に存在:Malar fat padなど)と深脂肪(顔面神経、三叉神経の分枝によりいくつかの領域に分類されている:buccal fatなど)に分けられます。

 

buccal fat padはmalaris m.の筋に沿って細長い脂肪が配列し、一部は眼窩脂肪外側と連絡しています。そして脂肪体と頬部ligamentの関係については、幅広いzygomatic ligamentは、大頬骨筋起始と広頚筋外側最上部の結合織の集合体であり、buccal-maxillary ligamentはbuccal fat pad 前縁から、masseteric-ligamentは後縁から立ち上がります。

 

malaris m.については、ご講演では毎回その重要性がお話しされていますが、malaris m.は眼輪筋の辺縁体で、輪状でなく線状の構造体であり、4つのパートに分類されています。

外側はlip retractorsの共通腱膜である上口唇白唇まで及ぶほど非常に発達していることもあり、内側は終末が箒の先のように広がり、脂肪を纏い抱え込み、それが鼻唇溝の上に乗る脂肪となっています。

 

・・・というような顔面解剖が、毎回美しいdissectionの映像とともにご解説されます。

 

 

その他のお話では、

そもそも malaris muscle の役割は?というと、外側は口元を「モナリザの笑み」のように引き上げ、内側は脂肪を引き上げる、という、アナログ的な作用なのでは、とか、

加齢による変化は表情筋のゆるみたるみなどによるというよりは、どちらかというと筋そのものよりも、筋束と筋束の横並びの間隙が広がることが原因ではないか、などのご考察がありました。

 

フェイスリフト手術における剥離の際にこれらを解剖理論を理解することが合併症を防ぐ意味で重要、との主旨のご講演でしたが、ヒアルロン酸注入、ボトックス注射などの際にも当然、より良い結果のためにこのような解剖の理解はとても大事です。

今回も大変勉強になりました。

 

 

 

また一般演題で『ヒアルロニダーゼの使用方法に関する考察』のご発表があり、そのご発表の主旨とはズレてしまうのですが、、、

 

以前から、ヒアルロン酸による皮膚血行障害がおきた場合の一般的な対処方法について、一部???と思っていた事(塞栓を疑うときに、状況の区別なくやみくもにマッサージをしてよいのか?という疑問)と関係のある内容でしたので、ちょっと書いてみます。

 

(以下はあくまでも個人的な想像を含みます)

 

 

 

他院で注入されたヒアルロン酸で皮膚の血行障害を起こして5日目に大学を受診された、という症例だったのですが、

 

写真では、顔面動脈支配領域の広範囲な血流障害があるものの主幹部の完全閉塞の5日目としては症状が軽く、しかも画像評価では顔面動脈主幹部は閉塞どころか逆に拡張している、という、まるで特殊な脳血栓症であるshower embolismを想像させるような状況でした。

 

他院で
発症の症例であり、発症直後に前医で行われた処置については詳細不明、とのことでした。

 

現在一般的に、フィラーで塞栓を起こした場合の対処方法としては、

ヒアルロニダーゼ投与、血管拡張剤投与。そしてマッサージは必要と認識されています。

 

今回の症例も、注入直後に強い痛みがあったとのことで、塞栓を疑いマッサージが行われた可能性があると考えます。

 

それにより顔面動脈主幹部に誤注入されたヒアルロン酸が中途半端な大きさに分断され、複数の顔面動脈分枝にパラパラと末梢血管閉塞を起こした、という機序があり得るかと思いました(あくまで想像です)。

 

明らかに圧迫による血流障害であったり、静脈閉塞、末梢動脈の閉塞の場合はマッサージは当然有用ですが、主幹部閉塞が疑われる状況の際のマッサージは、慎重であるべきなのではないか、と改めて思いました。

 

では、主幹部閉塞が疑われる場合はどうすべきか、というと、自分がそのような患者さんを経験したことがなく、海外のプロトコールはあるものの、血行障害の分類がなされていないため(圧迫か塞栓か、静脈が動脈か、主幹部閉塞か末梢閉塞か)いろいろなご報告や論文を参考に考えるしかありません。

 

・多量のヒアルロニダーゼを1時間おきに反復投与(2~3カ月前の論文より)

・抗血栓薬投与

・血管を拡張させる(血管拡張剤投与、温める)

・虚血組織の保護(視神経などの場合は特に、フリーラジカルスカベンジャー、多価酵素阻害剤、高張液投与なども有用かもしれません)

・低張液投与

 

など、状況に応じて必要と思われる事を迅速に行う必要があるでしょう。

 

 

 

そしてなぜ久しぶりに長々とブログを書いているかというと・・・

 

 

修学旅行や、胸部外科学会などが重なり札幌が大変なことになっていた影響で、ホテルは普通のシングルで予約したにも関わらず【特別室】(スイートではない)とやらに通され

 

扉はガラスと金属製の2重で、内部は我が家より広いのではないでしょうか(泣)

エステ施術ブースまであるという、一生ご縁のなさそうなお部屋に連泊させていただきました。

 

 

浮かれて帰りの新千歳空港で「保冷パックで8時間もつから大丈夫」と押しきられて冷蔵毛ガニを購入したところ、慣れない贅沢の罰があたったのか、、、

 

中部国際空港乗り継ぎで福岡に帰るはずが、札幌~新千歳空港の大混雑のため飛行機が遅れて乗り継げず、中部国際空港で冷蔵毛ガニと1泊するはめになったのでした。

 

さすがにカニ鋏なしで1人で毛ガニ2杯を食べるのは諦めて、コンビニで替えの下着と名古屋っぽいお菓子を購入して今に至ります。。。

 

明日朝のご予約の患者さん方には大変ご迷惑をおかけして申し訳ございません。

ご予約変更等のご理解ご協力をいただきまして、ありがとうございました。

 

おやすみなさい。

 

 

浄水皮ふ科クリニックHP http://josui-hifuka-clinic-com.check-xserver.jp/wp/

 

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