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ピタンギ先生と側頭枝 by 形成外科 阿部周策Dr

2017.03.21

形成外科 阿部周策dr

Webでちょっとした調べ物をしていたら、Dr. Pitanguyが昨年夏にお亡くなりになっていたことを知りました。心より御冥福をお祈り申し上げます。
 
 
Dr. Pitanguyはカタカナで表記すると「ピタンギ」となるようですが、ブラジルの形成外科医でとくに美容外科の領域でとても有名な先生で、いくつもの術式を提唱されたそうです。
 
93歳でお亡くなりになったそうですが、大変失礼ながら、ごく最近までご健在だったとは露知らずちょっとびっくりしました。ピタンギ先生に限ったことではないのですが、教科書などに名前が載っている有名な人を、私は無意識に「レジェンド」(→歴史上の偉人)とみなしてしまう癖があるようで、2012年に山中先生と同時にノーベル賞を受賞されたガードン先生もご健在であることに当時とても驚きました。。(ガードン博士らの行ったアフリカツメガエルをもちいた核移植の実験の概要は高校の生物の教科書に載っています。)
 
…さっそく脱線してしまいましたが、すべての形成外科医が美容外科に携わるわけではありませんが、Pitanguy先生の業績の中で形成外科医にもっとも馴染みがあるのは、Pitanguy-Ramos線として知られる顔面神経側頭枝の走行位置を予想する線ではないでしょうか。
 
(Pitanguy et al. Plastic and reconstructive surgery 38(4) :352-356, 1966 より引用)
 
 
顔面神経側頭枝とは、おでこの筋肉(前頭筋)を支配している唯一の神経で、その名の通り顔面神経の5つある枝のうちのひとつです。側頭枝が特に問題となるのは、他の枝と違って孤走する場合が多く、神経が損傷した場合に機能の自然回復がなかなか見込めないからです(下図参照。(T)で示されているのが側頭枝です)。
 
(Davis et al. Surg. Gynecol. Obstet. 102 :385-412, 1956 より引用)
 
顔面神経にまつわる論文では大抵引用される1956年の論文ですが、これは30ページ近くにわたる超大作ですが、著者のDavis先生は解剖学者なのだそうです。外科・産婦人科の雑誌に掲載されていることもなかなか興味深いところです。当時はすでにPRS(1946年創刊。形成外科領域では最も権威のある雑誌のひとつ)はあったはずなのですが、研究畑の先生だったのでご自身の業績が臨床のどの領域で役に立つかご存じなかったのかもしれませんね。(あるいは、ページ数が多すぎて形成外科系の雑誌には蹴られてしまったのでしょうか?まさかね…)
 
Pitanguy先生の1966年の論文は、そのPRSに掲載されていますが、外傷学の観点からではなく、美容外科の手術をいかに安全に合併症なく実施するかという点から書かれたもので、
これらふたつの著作はちょっと意外なところから誕生しているのもおもしろいところです。
 
 
 
 
と、書き始めた時の構想とはかけ離れてずいぶんマニアックな内容に突っ込んでしまいましたが、患者さんに知っていただきたいことは、顔は比較的浅いところにとても重要な構造物が潜んでいる場所がいくつかあるということです。
今回取り上げた側頭枝は、このfacial danger zones の「2」番の三角形のエリアに該当します。
こうしてみるとほとんどdanger zonesじゃないかという気もしなくもないですね。。。
ちょっとした擦り傷や切り傷であっても実は皮下の大事なものが切れていたという可能性も十分にありますので、顔のケガは形成外科を受診されることをおすすめいたします。もちろんケガ以外も。
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