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ケガしたときどうするか ~キズの基本的な取り扱い~ by形成外科 阿部周策Dr

2016.10.17

形成外科 阿部周策dr

 
 
体表のケガというのはありふれているはずなのですが、その適切な扱いというのは意外と知られていないなという印象を受けます。
 
まず結論から述べますと…
 
キズは洗いましょう。愛をもってやさしく
 
洗うことによって悪くなるキズはありません。
(ゴシゴシやりすぎたり、強烈な薬剤を使ってはダメですが)
 
以下、あたらしいケガを想定して書きます(縫ったキズ、擦りキズなどバリエーションはあるかと思いますが)。床ずれなど慢性創傷(経過/付き合いの長いキズ)はまたちょっと違う点もあるのですが、洗うことが大事という点はどちらも同じです。
 
 
ここまでもっちりしたきめ細やかな泡でなくてもいいです。むしろもう少し粗めの方が洗い流すときには便利かもしれません
 
 
 
【そもそも受診が必要?】
本当にちょっとしたものであればいいかもしれませんが、、、
意外といろんな罠が潜んでいるので、受診するに越したことはないでしょう。
(治ったけど、細かいジャリが埋まったまま治ってしまって外傷性刺青になってしまったとか、運悪く神経が浅いところを通っている場所で、麻痺が出てしまったということもあるので。)
 
キズが治った後も、赤みが長引いたり(PIH; 炎症後色素沈着)、キズの方向が悪くひきつれを起こして不自由だ(瘢痕拘縮)、などの問題が起こる可能性がありますので、
 
最初から診させていただいた方が患者さんにとっても医療者にとってもメリットが多いです。
 
これらには予防できるものもありますし、最初にそのような可能性について説明を受けていれば経過中の不安も減るでしょう。
 
 
【キズを洗う】
もし洗ったことによって悪くなったとしたらそれは、洗わなかった場合でも同じ結果(もしくはさらによくない経過を辿ること)になる可能性が高いと思います。
 
キズを洗うというと「そんなこと私たちできません」という反応にしばしば出くわすのですが、要はお風呂場でシャワーを浴びる時に一緒にキズも洗えばよいだけのことなのです。
 
病院やクリニックでキズの処置を受け、家に帰ってシャワーを浴びる時は、そこは濡らさないように工夫を凝らすより効率的かなと考えています。
もちろんキズの深さ・受傷原因や患者さんの全身状態などによっては毎日診察させていただいた方
がよい場合もあります。
 
 
【キズからの出血】
比較的あたらしいキズの場合はぬるま湯でもシミて疼いたり、多少血がにじむこともあろうかと思いますがそれで大丈夫です。
しっかり泡立てて、直接手でキズに触れずに
 
泡でキズを撫でる
 
イメージです。
 
出血も自分の手で5分間しっかり押さえればほとんどの場合止まってしまうでしょう。
 
大事なことは途中で『「止まったかな?」ちらっ「あ、まだだ」』×2とか×3というアク(悪)ションをはさまないことです。見て確認したい気持ちを抑えてただひたすら5分間押さえ続けます
 
これで出血の勢いが5分前とほとんど変わらないようであれば、診てもらっている病院やクリニックに連絡して指示を仰ぐのがよいかと思います。
(このプロセスはケガした直後の結構血が出ている時にも(の方が?)大切です。しっかり押さえた状態で受診してください。とくに血をサラサラにする薬を内服されている方(http://ameblo.jp/0927538119/entry-12198057346.html)。ゴムなどの道具を使うと予想外の力がかかってしまったりするので、手で押さえるのが一番安全です。)
 
 
【交換は毎日?】
キズを洗いましょうという点からすると、毎日がよいと思います、基本は。
一旦きれいに洗ってキズを覆っても数時間もすれば皮膚常在菌や日和見菌などが出現すると報告されています。毎日洗うことで、細菌が群がってくるのをリセットすることができます。
 
ただ、最近はとてもよい創傷被覆材(これについてもいつか書きたいと思っています。便利なのですが、向き不向きがあり、運用が難しい場面があります。)があるので、擦り傷などに貼って、1週間近くそのままでOKという場合もあります。Case by caseな面もありますので、担当の先生と相談してください。
 
 
【消毒は?】
これもキズの状態にもよるのですが、基本的には消毒はいらない合が多いです。
スクラブして、泡残りがないようにしっかり洗い流せば十分です。
 
消毒は細菌を叩きますが、自分自身の細胞にもダメージを与えていることを忘れてはいけません。
肉を切らせて骨を断とう!という男気溢れる患者さんもいらっしゃいますが、
実際は「骨を断たせて、肉を切っている」に近い状況になっているかもしれません。
細菌は私たちの細胞と違って細胞壁という立派な城壁を持っているのです。。。
 
【しかし時には…】
強い殺菌作用のある外用薬を使う場合があります。
とても汚れた道具での受傷だったり、動物に噛まれたキズ(見た目は汚れていないのですが、口の中には雑菌がいっぱい!)など感染のリスクが高い場合には時としてそのような選択をすることがあります。
 
【まとめ】
キズが治る過程には、大げさに言えばヒトと細菌の戦いがつきものなので、絶対にコレしとけば大丈夫という王道はあまりないのですが、キズを洗うという行為は数少ない王道の一つではないかと思います
洗っている水が汚染されているとダメなのですが、日本の衛生環境であれば水道から出る水はとてもきれいなのでOKです。ただ一旦湯船に溜めた水など、蛇口から出たてのもの以外は使わない方がいいと考えています。
 
以上は、創傷を扱う医師達のコンセンサスから大きくズレていることはないはずですが、医師ごとにそれぞれポリシーがあると思いますので多少の相違には目をつぶっていただけるとありがたいです。
 
 
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